外科ブログ
Blog※この下に手術中の写真があります。血液など苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
2021.05.13(木)
猫の口内炎は採食時に痛みを伴いネコちゃんにとって大変辛い病気です。
正確な原因が不明なことが多く治療も難しいケースがあります。
当初は歯石除去などの口内環境の清浄化を行いその後、抗菌剤、消炎剤、インターフェロン、免疫抑制剤などの内科治療を施すことが一般的です。
しかし、そのような治療でも改善しない「難治性歯肉口内炎」も少なからず存在します。
このような難治性のものには臼歯つまり奥歯を全て抜歯する「全臼歯抜歯術」が非常に有効なことがあります。(文献により60~95%の治癒率)
臼歯は歯根が複数ある多根歯なのでラウンドバーによる歯槽骨の掘削、歯肉フラップ術などの口腔外科のテクニックを駆使して歯根を残さず抜歯します。
投薬の必要がなくなる完治や薬を減らすことができる改善が見込めます

激しい痛みと炎症を伴う手術前の状態。

口腔内手術の為、神経ブロックを施します。

術後1か月。炎症の改善、投薬必要なくなりました。
2021.02.14(日)
猫の乳腺腫瘍は90%が悪性で再発、転移を起こしやすい。特に前方の乳腺にシコリが出来やすくリンパ節への転移にも注意が必要です。
ここでのポイントは腋窩リンパ節と副腋窩リンパの郭清(リンパ節とリンパ管を一緒に切除すること)です。
特に猫の腋窩、副腋窩リンパ節は深胸筋の裏に隠れているので取り残しがないように注意します。
シコリが小さくても片側乳腺全切除になるので猫ちゃんの負担も大きく大変です。
こまめに胸を触って早期発見に努めましょう。
乳腺癌の片側乳腺全切除(青塗りが腫瘍、点線が切除範囲)
副腋窩リンパ節。深胸筋に隠れています。
腋窩リンパ節
乳腺組織とリンパ管~副腋窩リンパ節~腋窩リンパ節の一括切除。
猫ではこの一括切除が非常に大切です。
2021.02.12(金)
犬の乳腺腫瘍は50%が良性50%が悪性です。悪性であっても早期であれば切除により完治が見込まれます。したがって早期発見、早期治療が大切となります。
シコリの大きさや出来た場所により手術法は異なり、特にリンパ管やリンパ節の分布を考慮して決めます。
このワンちゃんは後ろ二つの乳腺を鼠径リンパ節ごと切除しました。
乳腺のリンパ節の分布
切除範囲の決定
第4、5乳腺と鼡径リンパ節の切除
手術中、鼠径ヘルニアがあったのでこちらも整復
ヘルニア輪の閉鎖
手術後
2020.11.13(金)
脚の末端等に腫瘍(しこり)が出来たときに、切除しても周囲の皮膚が足りなくて切除後の傷の閉鎖が困難な場合があります。
この場合に使えるテクニックに動脈が支配している皮膚を帯状に切り出して(皮弁)、転移移植する方法です。
脚以外でも肩の周辺や乳腺~鼠径部(内股)、腰の周辺の動脈を利用して皮弁を作り大きな皮膚欠損部を覆うことができます。
大きな範囲の切除では、単純に切除後に皮膚を閉じても無理な引っ張り力の緊張がかかり傷が開いて治癒は困難です。
(特に、四肢では皮膚の余裕がないのでこのテクニックが有効です。)
後脚末端近くに出来た大きな腫瘍(実線円型部:肥満細胞腫)
膝の動脈を使っての皮弁作成の設計図
十分なマージン(腫瘍の根っこを残さないための正常部分の切りしろ)を取っての切除
皮弁の回転
無事綺麗に縫合が終わりました。
良好な治癒
2020.11.11(水)
膝蓋骨脱臼手術
小型犬の関節疾患で多いものです。手術適応かは脱臼の程度、年齢、将来の関節炎予防への考え方、そして症状(これが一番大切)と経済的事情をよく飼い主様と話し合って決めます。
当院での手術手技は①滑車造溝術②脛骨陵転位術③内方リリース④余剰組織縫縮術4つを組み合わせた方法で良好な成績をあげています。
①滑車造溝術:軟骨ブロックの切り出し、ラウンドバーでの掘削
②脛骨陵転位術:サジタルソーで脛骨切断、ピンニング固定
③内方リリース④余剰組織縫縮術
手術後のレントゲン写真
大腿骨の真ん中の「滑車溝」に膝蓋骨が整復されました。