外科ブログ
Blog※この下に手術中の写真があります。血液など苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
2020.11.13(金)
脚の末端等に腫瘍(しこり)が出来たときに、切除しても周囲の皮膚が足りなくて切除後の傷の閉鎖が困難な場合があります。
この場合に使えるテクニックに動脈が支配している皮膚を帯状に切り出して(皮弁)、転移移植する方法です。
脚以外でも肩の周辺や乳腺~鼠径部(内股)、腰の周辺の動脈を利用して皮弁を作り大きな皮膚欠損部を覆うことができます。
大きな範囲の切除では、単純に切除後に皮膚を閉じても無理な引っ張り力の緊張がかかり傷が開いて治癒は困難です。
(特に、四肢では皮膚の余裕がないのでこのテクニックが有効です。)
後脚末端近くに出来た大きな腫瘍(実線円型部:肥満細胞腫)
膝の動脈を使っての皮弁作成の設計図
十分なマージン(腫瘍の根っこを残さないための正常部分の切りしろ)を取っての切除
皮弁の回転
無事綺麗に縫合が終わりました。
良好な治癒
2020.11.11(水)
膝蓋骨脱臼手術
小型犬の関節疾患で多いものです。手術適応かは脱臼の程度、年齢、将来の関節炎予防への考え方、そして症状(これが一番大切)と経済的事情をよく飼い主様と話し合って決めます。
当院での手術手技は①滑車造溝術②脛骨陵転位術③内方リリース④余剰組織縫縮術4つを組み合わせた方法で良好な成績をあげています。
①滑車造溝術:軟骨ブロックの切り出し、ラウンドバーでの掘削
②脛骨陵転位術:サジタルソーで脛骨切断、ピンニング固定
③内方リリース④余剰組織縫縮術
手術後のレントゲン写真
大腿骨の真ん中の「滑車溝」に膝蓋骨が整復されました。
2020.10.22(木)
単一孤立性のしこりであったため開胸手術により肺の左側後葉摘出を行いました。
開胸手術は激しい痛みを伴うことがあるため、しっかりしたペインコントロール(痛み止め)と人工呼吸器による厳密な呼吸管理が必須です。
麻薬系鎮痛剤の投与、肋骨間神経ブロック、肋骨間カテーテルによる局所麻酔薬投与、フェンタニルパッチ、NSAIDS等により万全のペインコントロールを行いました。
摘出した肺のしこり。
術後の痛みも無く、落ち着いています。術後数時間で歩いて飼い主様と面会が出来ました。
臨床症状もなく飼い主様のお嬢様の「虫の知らせ?」で健康診断をしたおかげで手遅れにならずに済みました。
自覚症状を言えないワンちゃんネコちゃんには定期的な健康診断が大切だと感じました。
早く良くなるといいね。
2020.10.08(木)
本を読まないのに犬にもコンタクトレンズがあるの!?と驚かれることがありますが、このコンタクトレンズは眼の表面(角膜)に傷が出来てしまった時に使用します。傷をコンタクトレンズで覆って保護し治癒を促します。
痛みの軽減になり、視野も確保されるのでワンちゃんは快適です。
ただし、コンタクトレンズの脱落を防ぐために瞼を少し縫合することもあります。
動物医療の日進月歩を感じさせる治療器具なのではないでしょうか。
コンタクトレンズ専用ピンセット付き
コンタクトレンズの四隅に青い目印
出すと、こんな感じです。
装着。角膜(目の表面)に白い傷があります。
全く違和感なく、むしろ痛みが無くなっています。
2020.08.06(木)
ロッキングプレート法
小型犬の前脚骨折(とう尺骨骨折)
近年、超小型~小型犬用に「ロッキングプレート法」の器具が開発され従来型の手術法の欠点が改善されてきています。
トイ種(プードルやチワワなど)の前脚の骨はちょうど「割りばし一本分」位。
厚さ3mm幅は5mm前後なので特に成長期(1歳以下)にはソファからの飛び降り程度でも前肢を骨折してしまう事故が多いです。
この部分の骨折は「ギプスだけををして安静」ではなかなか良い結果にはなりません。
従来の手術法(DCPプレート、ピンニング、創外固定など)でも術後の合併症や癒合不全などの問題が指摘されていました。
しかし、近年「ロッキングプレート法」という新しいタイプの器具器具(シンセス社 1.5mmロッキングプレートとスクリュー)と概念が開発され好成績をおさめるようになってきました。
そのポイントは
①ロッキングプレート(板)はプレートとスクリュー(ネジ)がネジ山で固定されるので強固な支持力を発揮する。
②骨折部位から少し離してスクリューを入れることでロッキングプレートの「しなり」による骨治癒促進効果。
にあります。
当院の整形外科の有用な一つのアイテムです。
早く良くなるとイイね!